号外さんちゃ932号@アイヨシ


現実に生存する個人にとって本来の事件とはその個体の誕生と死亡のふたつだけだから話は簡単だ。しかし事件の発生が必ずしも誕生を意味せず終りが死亡を意味しない世界では各個人がそれぞれ自分にとって本来の事件を見極めなければならない。ないという可能性があるにもかかわらずだ。

 上記引用は『虚人たち』(筒井康隆/中公文庫)p239からですが、フジモリのネコソギラジカル書評の下読みをしていたら何となく思い出したのでチラシの裏の代わりにメモ。
 ちなみに、この『虚人たち』についての書評・感想をネットで探してみると、本書で行なわれている試みについて「1ページが1分」と説明している方が何人かいらっしゃいます。しかし、p8で6時6分となってて、それから70ページ後のp78で7時23分になっているのですから、1ページ1分では辻褄が合いません。
 これは、例えば『残像に口紅を』(筒井康隆/中公文庫)のp32で言及されているとおり「原稿用紙1枚分が1分」というのが正しく、1ページ1分というのはそれを誤解したものだと思います。
 確かに、読者的には1ページ1分の方が分かりやすいですが、それだと単行本から文庫みたいに版型が変わったときに大変ですからね(笑)。