『向日葵の咲かない夏』(道尾秀介/新潮文庫)

向日葵の咲かない夏 (新潮文庫)

向日葵の咲かない夏 (新潮文庫)

 夏休みを迎える終業式の日。小学四年生のミチオは先生に頼まれて欠席した級友Sの家を訪れた。しかしそこで彼が見たのは、首を吊って死んでいたSの死体だった。しかし、知らせを受けた警察が駆けつけたときには、その死体は消えてしまっていた。それから一週間後、Sは蜘蛛に生まれ変わってミチオの前に現れた。Sに頼まれたミチオは、事件の真相を追い求めることになる……。
 といったお話です。初っ端から「生まれ変わり」という現象が発生しますので、超常現象を前提としたSFミステリなのかと思いきや、事件そのものは本格ミステリとしては実に平凡なものですし*1、捜査の進展もまた地に足の着いたものです。
 では、いったい何のために「生まれ変わり」などというものが作中で用いられているのかといえば、これはもう読んでいただくよりほかありません。いや、ホントに凄いものを読ませていただきました。お世辞にも明るく楽しいお話だとはいえませんが、それでもあえてオススメします。
(以下、本書の真相に触れていますので既読者限定で。)

*1:死体の消失なんて珍しくも何ともありません(笑)。

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