『人類は衰退しました 7』(田中ロミオ/ガガガ文庫)

人類は衰退しました 7 (ガガガ文庫)

人類は衰退しました 7 (ガガガ文庫)

 あ。絵師が変わってる(すっとぼけ)。
 「日本じゅうがキミのレベルにおちたら、この世のおわりだぞ!!」とは、ドラえもんが残した名言ですが、巻が進むにつれて、妖精さんたちの活躍(?)よりも、衰退を自覚しつつもレベル自体は何だかんだで落とさないようにしている(旧)人類たちの取り組みを描くことの方に徐々に重きが置かれるように思います。今回も中編が2本収録されています。

妖精さんたちの、ちいさながっこう

 妖精さんと(旧)人類たちの間を取り持つのが調停官の仕事であるはずが、調停官事務局をクレーム受付センターのようなものと思い込んでいるクスノキの里の人々によって、なぜか学校の先生をさせられるお話です。

「衰退だなんて知ったことじゃない! こっちはまだ子どもなんだ! これから生きていかないといけないのに、ぜんぶ終わったみたいに言うな!」
(本書p114より)

 有体にいってしまえば、「人類は衰退しました」というタイトル自体、高度経済成長が終わって少子高齢化と人口減少の時代を迎えた今の日本社会を彷彿とさせるわけです。なので、いまどきのタイムリーな社会問題をテーマにしてしまうと、あっという間に世知辛いブラックユーモアの利いたお話になってしまうのも無理からぬことだといえるでしょう。
 生徒はA、B、Cの三人だけですがその関係はとても複雑で、子供たちはそれぞれに問題を抱えていて、それでいて三人そろって教師に対して反抗的で、さらにモンスターペアレント(いわゆるモンペ)も登場するわで、ついには「わたし」も教師として学級崩壊を食い止める為に強権を発動したりで、なんとまあ……。教育委員会が出てこないだけリアルよりかはマシですかね(苦笑)。

人類流の、さえたやりかた

 あまりネタバレするのもあれなので雑感を手短に。衰退しちゃった人類の後継者として妖精さんを認めつつも、一方でヒト・モニュメント計画に関連して機械などがさり気に登場している本シリーズは、ときに妖精さんが絡むとファンタジーで、機械が絡むとSFというように、両者の境を行ったり来たりすることで独特な世界観と読後感を醸し出しています。とはいえ、誰も彼もが行き来できるというわけでもなくて、行き来できないということは、もしかしたらそっちの世界は現実には存在しないのかもしれなくて……。そんなそこはかとない不安と恐怖とが、「わたし」という本シリーズならではの一人称視点の語りを利用することでテクニカルに語られています。
 えっ? オチ? なんですそれ?(笑)
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