よしづきくみち『君と僕のアシアト』集英社

 実写映画化される『フレフレ少女』のコミカライズを担当している、よしづきくみちの短編集です。商業誌、同人誌に掲載された短編が収録されています。高橋しんに似た絵のタッチで、線が細いながらもぷにっとした皮膚の感覚がよく出てると思います。
 タイトルにもなっている「君と僕のアシアト」は擬似タイムトラベルものです。なぜ「擬似」かというと、「過去に戻れるし干渉できるけれど、決して未来が変わらない(タイムパラドックスが起きない)」という設定だからです。どうやって過去に戻るのかという説明については作品を読んでいただくとして(笑)、まずその設定がうまいなぁ、と思いました。悩みを抱えた人物が、戻った過去で真実を知ります。それは「知らなければ良かった」という内容だったのですが、実は・・・という流れで物語は進んでいきます。まあ、広義の「夢」かもしれませんが、本人たちにとっては真実であり、「変えられないかもしれないけど、戻りたい過去」に対する焦がれる気持ちが読むものの胸を打つお話だと思いました。
 そのほか、孤島の学校での交流を描いた「about me」や教室から行ける不思議な場所を描いた「彼女のせかい」、「つないだ手」をキーワードにした「てのひら」や「なつみ」といった短編など、線のタッチもあいまって繊細な心の機微を丁寧に描いている印象を受けました。
 原作者ですが、同じ作者のマンガ『フレフレ少女』も読みたくなりましたし、なによりオリジナルの長編が読みたいなぁ、と感じた1冊でした。
フレフレ少女 1 (ジャンプコミックス デラックス)

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