有川浩『図書館危機』メディアワークス

 いやー、ほんと危機ですね。
 有川浩図書館戦争シリーズ」待望の第3巻。起承転結の「転」にあたります。
 前回と同じく小さいエピソードを積み重ねながら、大きなストーリィが動いていきます。
 フジモリが印象に残ったのは第3話「ねじれたコトバ」。
 軽度の差別用語を巡って出版とメディア良化委員会が丁々発止を繰り広げます。
 あれ?図書隊はどうからむの?と思ったかたは是非本編をお読みください。
 フジモリの父親は現役の「土方(ひじかた、ではなく、どかた)」です。父親も自分の職業を誇りに思い自らを「土方」といってますし、子供の頃、父親の同僚の人たちを「土方のおっちゃん」と親しんでました。
 社会人になって、「土方」という言葉が差別用語及び放送禁止用語になっていることを知りびっくりして、そしてなんとも言えない気分になりました。
 「図書館戦争シリーズ」は言葉と規制、そして報道と読者など様々なテーマを持っています。
 取り扱うテーマは結構ヘビィですが、コミカルなテンポとキャラで重さが軽減されています。
 「大きなストーリィ」としては全巻から引っ張った「例のアレ」にも決着がつきますし、人間関係に色々と変化がありますし、図書隊自体にも激震が走った事件がありとノンストップで読みきりたくなる面白さでした。
 巻を追うごとに勢いを増すこのシリーズ、最終巻が待ち遠しいです。

【関連】
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図書館危機

図書館危機

 あと、既読者向けに今後の展開予想。
 本巻の最後で稲嶺司令が茨城図書館の不祥事により引責辞任します。
 個人の思想によって築かれた図書隊ですが、その「思想」は隊員にきちんと伝わっています。
 『空の中』(←書評アップまち)もそうですが、有川浩は組織だとかプロフェッショナルだとかを書くのが非常に巧く、最終巻では求心力がある「個人」がいなくなっても「組織」として続いていく、という感じになるかと思います。
 あと、ベタ甘胸キュンが好きなので最後まで読者をニヤケさせてくれそうで、そこのところも期待してます(笑)。