『時計を忘れて森へいこう』(光原百合/創元推理文庫)

 電車が一時間に一本って、どんなど田舎が舞台だよ(爆)。……えーと、八ヶ岳南麓の小淵沢……すいません失言でした。忘れて下さい。ということは、清海→清里で、青海線→小海線ということですね。ヤバイ。情景が目に浮かんでしまいます(笑)。
 最近文庫落ちしたばかりですが、『遠い約束』より前に書かれたもので著者のデビュー作に当たります。
 三本の中編が収録されているのですが、謎と悩みの中間のような問題に、自然観察指導員とワトソン役の女子高生がそっと向き合うといった感じのミステリです。ですから、驚愕のトリックとか論理に圧倒されるとか、そういうのとは全く違います。そこで導き出される答えは、生きている人を助けるためのものです。
 あとがきによれば、本書については「青臭い」という批評も結構あったらしく、それも確かに分からないでもないです。しかし、本書の一見すると甘ったるい雰囲気が実は、ここは肯定されることに慣れるための場(p265より)の一文が示しているように、辛い世情に立ち向かっているからこそのスタンスなわけですから、そうした批評はちょっと違うように思います。てゆーか、死との向き合い方に普遍的な答えがあるとは到底思えませんから、青臭い正解があったとしてもそれはそれでよいと思いますけどね。

時計を忘れて森へいこう (創元推理文庫)

時計を忘れて森へいこう (創元推理文庫)