『弁護側の証人』(小泉喜美子/集英社文庫)

弁護側の証人 (集英社文庫)

弁護側の証人 (集英社文庫)

 最初に白状してしまいますが、私は本作の良い読者ではありません。私が最初に本作を読んだのは、古本屋で買った昭和53年刊行の集英社文庫版です。どこかでミステリ史に残る傑作との評価を目にしたので手に取ったのですが、初読時には正直いってそこまでのものとは思いませんでした。というのも、法廷ミステリとしての醍醐味、あるいは社会派ミステリとしてのテーマ性という面からは深い感銘を受けましたが、ミステリとしての妙味がまったく理解できなかったからです。
 そんなわけで長らく記憶の片隅で眠ってた作品なのですが、裁判員制度の施行という大きな司法改革を背景とした法廷ミステリのちょっとしたブームの流れで本書も復刊されまして、web上にも本書の書評・感想が続々とアップされるようになりました。ということで、毎度お世話になっている黄金の羊毛亭さんの感想を読んでみたのですが、おかげ様で本書の真価をようやく理解することができました。成程。確かに傑作です。古い作品であるが故の古びた描写が目に付くのは致し方ないところであはりますが、多くの人に読んでもらいたい傑作です。
(以下、既読者限定で。)

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