中道裕大『放課後さいころ倶楽部』

 「さいころ」とかタイトルについてるから女子高生たちがキャッキャウフフとTRPGをする漫画かと思ったじゃないですかーやだー(嬉しそうに)
 とは言っても実際には当たらずとも遠からず。本作『放課後さいころ倶楽部』の主役は「アナログゲーム」たちです。

春の京都―――――
見知らぬ街に引っ越してきた女子高生の綾。
彼女とはじめて友達になったのは、
引っ込み思案な同級生の美姫。
ある日の放課後、委員長の翠の後をこっそりつけて綾たちが訪れたのは、
アナログゲーム専門店、その名も「さいころ倶楽部」!!

思わずやってみたくなる、本場ドイツのボードゲームも満載!!
「楽しい」を探す少女たちと、心躍るゲームの世界へ!! 
(小学館HPより)

 サイコロやカードによって行われる遊び、「アナログゲーム」。ボードゲームボドゲと称されることが多いですが、「ごきぶりポーカー」や「ハゲタカのえじき」のようなカードゲームもあるので、当記事では「アナログゲーム」と呼ばせていただきます。
 京都を舞台とした、女子高生たちが放課後にアナログゲームをただただ遊ぶという漫画なのですが、これがまた非常に面白かったです。
 まずは、題材。
 浅学ながら、「アナログゲーム」の存在は知っていてもその内容について詳しくは知らなかったのですが、「人狼」など名前は聞いたことのある心理戦のゲーム、「ごきぶりポーカー」「ハゲタカのえじき」など手軽ながら盛り上がるカードゲーム、「」などサイコロとボードを用いた奥の深いボードゲームなど、この漫画では「ゲーム」が主軸に据えられており、作者の「面白いゲームを伝えたい!」という想いがひしひしと伝わってきて好感が持てます。作中に登場した料理を食べたくなる食マンガのように、作中に登場したゲームを遊びたくなる魅力にあふれているのです。実際、フジモリもこの漫画を読んで思わずゲームを買ってしまいました。
 さらには、漫画としても面白い作りになっています。個性あるキャラたちがそのゲームを遊ぶことで、一つの物語が生まれます。理知的な翠と天然な綾がなぜか戦法がかぶってしまった「ハゲタカのえじき」(第8話)、嘘が顔に出る綾を負かさないようにプレイする翔太(第4,5話)、はたまたお互いの性格を知っているからこその結末を迎えた「人狼」(第10話)など、理知的、天然、友達思いなどキャラの個性そのものがプレイヤーの遊び方(戦法)に結びつくので、まさにTRPGのリプレイがごとく、ゲームそのものもゲームをプレイしている彼女らの姿も読み手は楽しむことができるのだと思います。
 実際のところ、導入、ルール説明、プレイ、オチとかなり詰め詰めですので作者はかなり構成に苦労しているだろうなぁと感じるところはありますが、それを上回るほどのの「面白さ」がゲームの数だけ、プレイの数だけ込められています。
 アナログゲームを知っている人も知らない人も、いやむしろ知らない人にこそ読んでもらいたい、そんな一冊です。
【ご参考】コミックナタリー - Power Push 「放課後さいころ倶楽部」中道裕大
【作者twitter中道裕大 (shimaneko555) on Twitter

ハゲタカのえじき (Hol's der Geier) 日本語版 カードゲーム

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