小原愼司『地球戦争』小学館

地球戦争 1 (ビッグ コミックス)

地球戦争 1 (ビッグ コミックス)

 『菫画報』『二十面相の娘』など、レトロで味わい深い画風と同じくレトロなSF風味の作風でフジモリの心のお気に入りフォルダに入っている漫画家、小原愼司の最新作になります。

万国博覧会開催に沸く大英帝国絶頂期の倫敦。
突如火星より飛来した三脚砲台は
華の都を一瞬で地獄に変えた・・・!!
孤児院で暮らす少年・オリバーは混乱の中、
上流階級の少女・アリスと出会う。
押し寄せる圧倒的絶望の中で、
交わるはずのなかった二人の運命は次第に交錯し・・・・・・
(裏表紙より)

 これまたド直球のSFものです。タイトルの『地球戦争』からわかるとおり、もH・G・ウェルズの『宇宙戦争』を世界観の下敷きにしています。
 『二十面相の娘』は古典に対し独自の色を加えながらも、原作に対する敬意と誠意が感じられましたが、本作も同じく、空想科学小説の傑作に対する最大限の敬意と誠意を感じ取ることができました。
 ストーリーそのものはウェルズの作品とは異なり、孤児院で最下層の暮らしをしながらもそこからの脱出を目指している少年・オリバーと貴族としての誇りを高く持っている上流階級の少女・アリスの二人を軸に、大英帝国を侵略する異星人との戦いと逃避行を描いています。
 キャラ造形やストーリー展開などは「ベタ」に属する部類かもしれませんが、作者の画風と見事にマッチしています。
 巻末の対談で、

デビュー10年目で『二十面相』はじめて、そこそこ売れて、ちょっと手ごたえもあって、古典的なものを今の味付けでやる、ということにも少し自信がついたんです。ある程度ああいうことやっても読者の興味引けるんだな、という事ですね。(P189)

 と作者自ら語っているとおり、『二十面相の娘』で培った経験が本作に活かされていると感じました。
 ウェルズ『宇宙戦争』を読んだのは子供の頃ですが、あのとき感じた絶望感。そして結末の脱力感。『地球戦争』もまた、人がわんさか死んでいきます。

 それでもなお生きようと足掻く主人公たちの逃避行は、古き良き子供心のワクワクドキドキ感を掘り起こしますし、一方で「この作者であれば希望のある結末へ導いてくれるだろう」と完全に作者に身を委ねられる安心感があります。
 月末には2巻も出ますので、未読の方はこの機にまとめて読むことをお勧めします。現時点では2013年のフジモリが読んだマンガで上位に位置する一冊。オススメです。

地球戦争 2 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)

地球戦争 2 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)