『マンガと音楽の甘い関係』(高野麻衣/太田出版)

マンガと音楽の甘い関係

マンガと音楽の甘い関係

「マンガに描かれた音楽」というと、いわゆる「音楽マンガ」にまつわる話だと考えられがちだ。なるほど、古くは『オルフェウスの窓』(池田理代子)から『いつもポケットにショパン』(くらもちふさこ)、そして『のだめカンタービレ』や『坂道のアポロン』(小玉ユキ)に至るまで、少女マンガの傑作には、ジャンルとしての「音楽マンガ」が金字塔のようにそびえたっている。
 でも、私がこの本でとりあげたいのは、そうしたジャンル以外の「ふつうの少女マンガ」である。あるいは「少女たちが愛するすべてのマンガ」。その端々にこぼれ落ちている、音楽のキラキラの話である。
(本書p15より)

【当blog過去記事】漫画が表現する「音楽」 - 三軒茶屋 別館
 上記過去記事は、いわゆる「音楽マンガ」における音楽の表現方法について、おおまかに4つに分類してみたりしたわけですが、本書において考察されている音楽とマンガの関係は、そうした音楽マンガに限ったものではありません。主として少女マンガ全般における音楽とマンガの関係ということで、より広く、それでいて細部にこだわったエッセイ的書籍となっています。
 「ふつうの少女マンガ」を対象にしたとはいうものの、『のだめカンタービレ』についてはそれなりの紙数が割かれていますので、音楽マンガに興味のある方にとっても読み応えのある内容だと思います。
 目次を紹介すると、「序章 あらゆるマンガ家は音楽の状態に憧れる ――目に見えない音楽をあえて描く3つの理由」「第1章 ピアノの王子様 ――音楽を奏でること、キャラクターをあらわす音楽」「第2章 音楽と恋とチーム男子 ――音楽を聴くこと、関係性をつなぐ音楽」「第3章 アコガレ遺伝子 ――装飾的音楽描写と、小道具としての音楽」「第4章 乙女心のインテリ欲 ――「言葉」のフェティシズムと、舞台音楽」「第5章 音楽(テンション)を描く人 ――BGM、サントラ、リリック、リフレイン」「第6章 音楽の神が支配する ――音楽をビジュアルで、表現するということ」となっています。
 少女マンガが主な対象となっていると同時に、本書におけるマンガの読み方もまた少女的であることは、章題を見れば何となくお分かりいただけるかと思います。「ギャップ萌え」や「バディ萌え」、「チーム萌え」といった単語が何の説明もなく当たり前に使われていたりしますので、読みづらく感じる方もおられるかもしれません。ですが、そうした場合でも、このマンガのこの場面(あるいはこのセリフ)がいい、といった具体例がきちんと提示されますので、読み進めていく上での支障はないかと思われます。とはいえ、本当にたくさんの作家やマンガが紹介されていて、私としても未読のものばかりで圧倒されてしまうのですが、それならそれとして本書をガイドブックとして活用することもできます。
 水城せとな勝田文ヤマシタトモコ雲田はるこのロングインタビューも収録されています。多くのマンガ読みに対して広くオススメできる一冊です。