押切蓮介『ハイスコアガール』を読んで「あの頃」を懐かしみたくなった人のためのブックガイド

このマンガが好きな人とは美味い酒が飲めそうだ。 押切蓮介『ハイスコアガール』 三軒茶屋別館
 2012年の私的ベスト10に確実に入る傑作マンガ、押切蓮介ハイスコアガール』。
 舞台は1991年のゲーセンという、「ポリゴン?なにそれ?」「音ゲー?知らんなぁ?」な2Dゲーム全盛期の古きよき時代なのですが、この作品がグッとくる読者はまさに「ファミコン世代」、そして俗に言う「ナナロク世代」が中心だと思われます。

ナナロク(ななろく)世代とは・・
一般的に辞書や国語辞典では1976年前後に生まれたネット起業家を指す。ネット業界では、ソフトバンク社長の孫正義氏(1957年生まれ)らが「第1世代」、楽天社長の三木谷浩史氏(1965年生まれ)らを「第2世代」、1976年前後に生まれた世代を「第3世代」と位置づけられている。このブログではナナロク世代とは「1976年前後に生まれた世代そのものを指して使っている。
1976年前後に生まれた世代は小学生のころ家庭用ゲーム機であるファミリーコンピューター(ファミコン)が発売される。思春期には音楽記録メディアがレコード・カセットテープからCDへ、大学に入学したころにウィンドウズ 95が発売され、卒業の頃インターネットによる就職活動が始まるなど・・、あらゆるトランジション(過渡期)においてアナログ的環境からデジタル的環境への転換の瞬間の時にいつも身を置く。アナログ的な感覚を残しつつ、デジタルとの友好的・効果的な付き合い方を知っている世代でもある。
ナナロク世代とは・・ | ナナロク世代の生きる知恵の輪より)

あまり詳しい話をしだすと年齢がばれてしまうのでボカしますが(笑)、「ファミリーベーシック」とか「水晶の龍のウソテクに騙されてメディアリテラシーに目覚める」だとか「やたらパスワードが長い邪聖剣ネクロマンサー」とか「ゲーセンで脱衣麻雀をしようとコインを入れたら天和あがられて呆然」だとか「ゲーセンに行くのにカツ上げ対策で靴の底に折りたたんだお札をしのばせる」だとか「ファミコン世代あるある」をはじめると一晩語れそうな事項を共通経験として持っている世代だと思います。
 そんな「ファミコン世代」が当時を懐かしめる本を何冊か紹介したいと思います。

押切蓮介『ピコピコ少年』『ピコピコ少年TURBO』

ピコピコ少年

ピコピコ少年

ピコピコ少年TURBO

ピコピコ少年TURBO

 『ハイスコアガール』のもとになった、作者の自伝的エッセイマンガです。
 エッセイですので物語補正もなくヒロインも登場しない、だからこそ「あの頃は馬鹿だったなぁ」という読者自身の過去を投影してしまう一冊。
【紹介記事】押切蓮介『ピコピコ少年』太田出版 三軒茶屋別館

くさなぎゆうぎ,白川嘘一郎『れとろげ。』

れとろげ。1 (マイクロマガジン☆コミックス)

れとろげ。1 (マイクロマガジン☆コミックス)

 古き良きレトロゲームレゲー)を愛する女の子たちの学園ギャグ4コマです。
 舞台は現代ですが、ネタのそこかしこに当時の「あるあるネタ」が散りばめられています。
 「初代ファミコンのボタンは四角」「大竹まことのただいま!PCランド」「ゲームギア」「中山美穂のトキメキハイスクール」などのキーワードが心の琴線に引っかかる方は、読んで損はないと思います。
【紹介記事】萌え4コマの皮をかぶった濃ゆすぎるレトロゲー小ネタマンガ『れとろげ。』 三軒茶屋別館

三ツ雪柚菜『すこあら!』

すこあら! (1) (IDコミックス 4コマKINGSぱれっとコミックス)

すこあら! (1) (IDコミックス 4コマKINGSぱれっとコミックス)

 こちらもレゲー好き女子高生ゲーマー4コマ。
 『れとろげ。』とネタが被る部分もありますが*1、まあ、まさに「あるある」、という感じですね(笑)。
【紹介記事】レゲー天国! 三ツ雪柚菜『すこあら!』

ひさの瑠珈『CONTINUE?』

Continue? (1) (ゲーメストコミックス)

Continue? (1) (ゲーメストコミックス)


絶版本を投票で復刊!

 ひさの瑠珈『CONTINUE?』は、1995年に刊行された4コママンガです。
 ゲーセンを舞台に二人の女の子がドタバタを繰り広げるお話ですが、当時のゲーセンの雰囲気がわかる、史料としても貴重な一冊。
 このマンガのことを話すときには「むかし、コミックゲーメストという雑誌があってな・・・」などと長老風に思わず語ってしまいたくなります。
【紹介記事】13年前の「らき☆すた」? 三軒茶屋別館

江崎ころすけ『げーせん』

げーせん (ミッシィコミックス)

げーせん (ミッシィコミックス)

 ゲーセンつながりで、こちらも舞台はゲームセンター。
 やとわれ店長の兄に頼まれ、ゲームセンターXXのアルバイトを始めた主人公・沢田ナオミ。ゲーセンの裏側を知り、常連客と仲良くなりながら、アルバイトとして一人前に成長していくお話です。
 舞台は現代ですが、このマンガでは古きよきゲーセンの雰囲気を満喫できます。
【紹介記事】古き良き「ゲーセン」の雰囲気を満喫できる一冊 江崎ころすけ『げーせん』宙出版

卯月鮎『はじめてのファミコン

はじめてのファミコン―なつかしゲーム子ども実験室

はじめてのファミコン―なつかしゲーム子ども実験室

 ちょっと変化球ですが、「生まれて初めて遊ぶゲームがプレステ」という「ファミコンを知らない世代」の子供に昔なつかしのファミコンのゲームを遊んでもらったらどうなるだろう?という本です。
 「カラテカ」「スペランカー」「スパルタンX」など、あのころの思い出補正を冷静に突っ込んでくれる子どものコメントが面白いです。
【紹介記事】フジモリの書評 卯月鮎『はじめてのファミコン』(三軒茶屋 本館)

僕たちの好きなTVゲーム (80年代懐かしゲーム編)宝島社

僕たちの好きなTVゲーム (80年代懐かしゲーム編) (別冊宝島 (1412))

僕たちの好きなTVゲーム (80年代懐かしゲーム編) (別冊宝島 (1412))

 最後はまさに「資料」として手元においておきたくなる一冊。
 ファミコンを中心に当時のゲームについて説明が書かれています。
 圧巻はエンディング画面一覧。当時クリアできずに挫折したゲームたちのエンディングをたっぷり拝むことができます。

 ほかにも『アーケードゲーマーふぶき』とか、『ゲーム帝国』とかたくさん紹介したい本はありますが、泣く泣く割愛。
 こうやってみると、フジモリ自身も含め、改めて自分の青春時代はゲームとともにあったんだなぁ、と感じます。
 ええ、ナオンとキャッキャウフフすることが一切無くヤローたちとゲームに明け暮れた青春時代でしたけどね。うん、泣いてないよ。
 後ろばかり向いていても生産性が無いのは承知のうえで、それでもふと昔を懐かしみたくなったら、この記事で取り上げた本を読みながらようつべでレゲーのプレイ動画を探してみるのもまた乙なものかと思います。

*1:発売はこちらが先ですが