安定した鈴城節。『JC探偵でぃてくてぃ部』

 『看板娘はさしおさえ』『家族ゲーム』『くすりのマジョラム』など、フジモリが作者買いをしている数少ない4コマ漫画家・鈴城芹が新たに刊行しました初の非・4コママンガです。
 質屋の一人娘「早潮小絵(さしお さえ)」とその質屋に質草として持ち込まれた衣装行李に取り憑いていた幽霊少女・十世の二人とその家族たちが繰り広げるコメディ『看板娘はさしおさえ』、ゲーム好き家族の4コマ『家族ゲーム』、幼女体型の姉とたゆんたゆんな妹が経営する魔法薬屋のお話『くすりのマジョラム』と、シチュエーションは異なりながらも鈴城印クオリティで安心して読める作家さんですが、本作『JC探偵でぃてくてぃ部』もまた同様です。
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 探偵だった曽祖父に憧れ「でぃてくてぃ部」を立ち上げた照葉、盗撮もといテクニカル担当・細、ぱんちら要員格闘少女・詩のJC(ジャパンカップでもジャッキーチェンでもなく、女子中学生の略です)3人組が学校に設立した「探偵部」ならぬ「でぃてくてぃ部」。当然ながら探偵の英訳「Detective」をもじったものですが、学校で起こる怪事件を3人が次々解決したりしなかったりしていく、というお話です。
 形式は基本4コマ、合間に非4コマと複合していますが、初めての非4コマということもあり作者も探り探り描いている様子が見受けられますが、いつものごとく、すれんだー少女とたゆんたゆんお姉さんたちによる爽やかな下ネタ入りのコメディ。もちろん鈴城芹作品には欠かせない年の差ガチ恋愛要素も満載。
 「探偵」がテーマとあって「少女探偵団」的なミステリ要素を期待してしまうと肩透かしを食らいます。なにせ立ち向かう事件が盗撮とかストーカーとか、いわゆる「本当に探偵が取り扱うような」事件。作者もあとがきで「すみません実は女子中学生の部活モノで、お仕事モノとしての探偵モノでした。殺人とかトリックとかは難しくて・・・」(P128)と書いていますが、質屋、薬屋などと並列する「探偵」という職業モノ、という認識で読むマンガです。いわゆるミステリ小説の探偵とは異なる脚でお金を稼ぐ泥臭さがほんのりとにじみ出てきて面白いです。
 オール4コマと異なり非4コマが混ざる分、1ページあたりの情報量がやや薄くなるためあっという間に読み終えてしまう1冊ですが、この作者は巻を追うごとにキャラクタの関係性が深まり、それがまた面白さに昇華していくという良さを持っています。*2
 まさに2巻に期待、としか言えませんが、2巻が出たら買ってしまうことは確かです。この作者の他の作品が好きでしたら読んで損はないと思います。
【関連】鈴城芹『くすりのマジョラム』芳文社
【作者HP】Dropwort Bell Castle
【作者twitter@suzusiroseri

*1:P18

*2:余談ですが、作中では『看板娘はさしおさえ』の世界とちこっとリンクしています。