馬を知れば知るほど面白い。 松本ぷりっつ『おってけ!3ハロン』

おってけ!3ハロン 1 (ギャロップコミック)

おってけ!3ハロン 1 (ギャロップコミック)

 競馬雑誌『週刊Gallop』に掲載されている、松本ぷりっつによる「馬漫画」です。
 競馬漫画と言えば主に「ジョッキーを主役とした」漫画であったり「牧場を舞台とした」漫画であったりと、基本的に主役は「人」なのですが、よしだみほ馬なりハロン劇場』など、「馬そのもの」を主役とした漫画もあるわけで、この『おってけ!3ハロン』もそのなかの一つです。
 作者・松本ぷりっつは『うちの3姉妹』などで有名な漫画家ですが、競馬好きでも有名。このほんわかした筆致で、競争馬たちを見事に「キャラ化」していきます。
 基本的に、その週に行われる重賞レースの出走(予定)馬たちを中心に、妄想的な掛け合いを繰り広げる漫画なのですが、競馬好き、馬好きだったら思わず「ニヤリ」としてしまう絶妙なキャラ付け。
 「キャラとは「情報」そのものである」というのは某批評家の論を待たずして「読み手」は体得している自明の理だとは思いますが、そういう意味でも「競争馬」というのは「情報」すなわち「個性」の固まりです。
 良血馬(父母ともに有名な馬)はお坊っちゃんとして描かれイジられ、勝ちきれない馬は地味な頑張り屋として描かれる。
 実際に彼ら彼女らはそんな性格ではないと言うことは重々承知の上で、この「キャラ化」による掛け合いを「こいつら、こんなこと言いそうだよねー」と笑って読んでしまいます。
 個人的には嫁き遅れのプリキュア姉さん(テイエムプリキュア)と産駒の娘たちにシカトされるロブロイ父ちゃん(ゼンノロブロイ)が好きです。
 そして事実はフィクションよりも奇なり、と、昨年のジャパンカップを舞台としたこの回は、
*1

ローズバド母ちゃん「でもあなたなら大丈夫よ。もし勝てなかったらママがJRAに言ってきてあげる」
ローズキングダム「何をよ!」

 なんとローズキングダムが繰り上がり一着。
2010年ジャパンカップ結果(netkeibaより)
 後日譚の書き下ろし漫画ではこんな風に描かれてしまいます(笑)。
*2
 読み手にある程度の競馬知識が必要な「読み手を選ぶ」本であることは事実ですが、まさに「狭ければ狭いほどヒットする」ニッチな馬漫画。競馬好きには文句無くおすすめします。
【作者ブログ】
松本ぷりっつオフィシャルブログ「おっぺけですけど いいでそべつに。」
チーム3ハロンの野望
【作者twitter松本ぷりっつ(@3furlongpu)

*1:p100

*2:p101