「命」をいただくということ。『銀の匙』副読本の狩猟マンガ!? 岡本健太郎『山賊ダイアリー』

山賊ダイアリー(1) (イブニングKC)

山賊ダイアリー(1) (イブニングKC)

 雑誌『イブニング』に連載されている、岡本健太郎のエッセイ漫画です。
 タイトルに「山賊」とありますが、なにも本当に山賊家業をやっているわけではなく、猟師、すなわち「狩猟」をやっている作者によるエッセイ漫画というカテゴリーになります。
 岡山の田舎で育ち、祖父と遊びながら狩りのノウハウを教えてもらった作者。
 前段で作者が「狩り」をするまでの経緯が描かれますが、田舎育ちのフジモリにとっても何となくうなずける内容でした。
 「食べるために生き物を殺す」という直接的な行為に対し、都会育ちの彼女と喧嘩別れする作者。確かに、自然や生き物が常に近くにある世界はある意味「異世界」なのかもしれません。
 『山賊ダイアリー』では、作者が猟をするための武器(空気銃。でもウサギぐらいだったら平気で狩れる強力な奴)を入手したり、資格をとったり、初めて実践したり、罠を作ったりと普段生活しているうえではまず知ることのない「猟」について語られます。
 そして、獲物を狩った後の食事についても。
*1
 作者の淡々とした筆致もあるのですが、決して「美味しそう」というわけでもありません。しかし、だからこそ逆に「命をいただく」という「事実」を受け止めることができます。
 荒川弘の最新作『銀の匙』は、農業高校を舞台とした良質な青春コメディなのですが、「農」という重いテーマをコメディの味付けで旨く*2「エンターテイメイント」として昇華しています。
 そのなかでも、「命をいただく」というテーマに重きを置かれ、主人公・八軒が悩みながらも成長していきます。
*3
 「食」とは「命をいただく」こと。「農業」と「狩猟」という違いこそあれ、両者に流れるテーマは似通っている気がします。
 そして「狩猟」とは「直接命を狩る」行為でもあります。

*4

ハトは可愛らしい鳥です。
普段から肉は食べているわけでぼくが知らない所で生き物は
死んでいるわけですが
それを自分の手で行うというのは
やはり複雑なものがあります。

 まさに、『銀の匙』の副読本ともいうべき漫画かなあ、と思っています。

銀の匙 Silver Spoon 1 (少年サンデーコミックス)

銀の匙 Silver Spoon 1 (少年サンデーコミックス)

百姓貴族 (1) (ウィングス・コミックス)

百姓貴族 (1) (ウィングス・コミックス)

*1:p25

*2:誤字ではありません。作中の食べ物が本当に美味しそうなんです。卵かけご飯とか

*3:荒川弘銀の匙』2巻、P135

*4:p21,22