『看護助手のナナちゃん 1』(野村知紗/小学館)

看護助手のナナちゃん (1) (ビッグコミックススペシャル)

看護助手のナナちゃん (1) (ビッグコミックススペシャル)

 ナナちゃんは看護助手です。
 看護助手は、看護師さんのサポートや、患者さんの生活をお手伝いするお仕事です。
 そんなナナちゃんの物語、始まります。
(本書p1〜3より)

 「ビッグコミックオリジナル」にて連載中の漫画です。
 看護助手というのは看護師さんのサポートをする仕事です。つまり、病院において医師のサポートをする看護師のサポートをするのが看護助手、ということになります。なので、例えば看護師を題材にした漫画『病院のないしょ』(NYAN/ぶんか社)シリーズなどとは描かれている仕事や物語は微妙に異なります。
 オビには「ホントの病院物語」とあるのですが、医師のサポートのサポートという看護助手の役割ゆえに、その仕事ぶりは医療行為寄りというよりは患者さんの生活寄りといった内容になっています。食事や排泄や入浴や移動の介助が仕事の中心なので、ともすれば「看護」というよりも「介護」と表現するのが適切なようにも思います。
 絵柄については、書影に描かれているキャラクターをご覧いただけばお分かりいただけるかと思いますが、より詳しく漫画の雰囲気などに興味のある方は、以下の投稿サイトからナナちゃんの仕事ぶりをお読みいただくことができます(単行本1巻収録作品は投稿サイトのものとは異なりますが、絵柄などは同じです)。
http://www.dreamtribe.jp/comic/works.asp?work_id=800
 ヘタウマというか可愛らしい雰囲気の絵ではありますが、内容は現実味溢れる実録風漫画です。看護助手が生活のお手伝いをする患者さんは重い病気や怪我、あるいは障害の方ばかりです。そうした病気や障害と向き合う苦しさ、そして死を迎える悲しさ。可愛らしい絵だからこそ引き立ってしまうのがこの漫画の持つ力だといえます。ですが悲しいことばかりでもなくて、意思の疎通が困難な認知症の患者さんと意思を通わせることができた瞬間があったり、末期癌の患者さんに残りの人生を生きる希望が湧くことがあったり。なによりも、一生懸命に仕事をして患者さん一人ひとりに向き合うナナちゃんの姿に、しんみりながらもほっこり気分にさせられます。
 構成としては、見開き2ページ(1ページの場合もあり)で、向かって右上に名前のある患者さん一人のエピソードを紹介するというパターンで進んでいきます。患者さんの登場頻度は入院期間や頻度によって異なります。当たり前のことですが、病院というのは何人もの患者さんに対して不公平のないよう接しなくてはなりません。警察小説風にいえば、複数の事件が同時進行しているモジュラー形式な病院の現場を描くのに適した構成だといえるでしょう。この構成によって独特のリズムと日常感も生まれています。
 難しいことを抜きにして多くの方にオススメしたい一冊です。
【関連】
http://203.139.202.230/08manga/090405taisyo01.htm
看護助手のナナちゃんというマンガ | たまに描く日記