初野晴『初恋ソムリエ』角川書店
- 作者: 初野晴
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2009/10/02
- メディア: 単行本
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●初野晴『退出ゲーム』角川文庫 - 三軒茶屋 別館
前回の『退出ゲーム』ではフジモリは全く気づいていなかったのですが、過去にアイヨシが書評した『水の時計』、『1/2の騎士 harujion』、『トワイライト・ミュージアム』、『漆黒の王子』の著者だったんですね。そうとは知らずにあまりに『退出ゲーム』が面白かったものでフジモリが書評してしまいました。すみませんねぇ(笑)>アイヨシ
閑話休題。
『初恋ソムリエ』は、『退出ゲーム』に引き続き、弱小吹奏楽部で「普門館(吹奏楽部の甲子園)」を狙う、熱血脳味噌筋肉少女のフルート吹き・穂村千夏こと「チカ」と、中性的で明晰な頭脳を持っているがとある秘密を持っているホルン吹き・上条春太こと「ハル」に様々な難事件が降り懸かります。
あいかわらずのキャラクタのかけあいと、ぴりっとしたアクセントとして効いてくるミステリ成分で、本書も一気に読み切ってしまいました。
以下、各中編について。
「スプリングラフィ」では新たなキャラクタが登場します。成島さんといいツンデレキャラ率が多いように見受けられるのですが、これは仕様でしょうか?(笑)
「周波数は77.4MHz」はラジオと鉱石のお話。新たな「ブラックリスト十傑」麻生も良いキャラですが、題材が「ラジオ」ということで瀬川深『ミサキラヂオ』を思い起こさせます。
●瀬川深『ミサキラヂオ』早川書房 - 三軒茶屋 別館
「アスモデウスの視線」は「席替え」という「学校」特有のイベントを題材にしています。ダークな内容なのですが読後感が重くならないのがこの作品の良さでもあると思います。
そして、表題作「初恋ソムリエ」。「初恋ソムリエ」という職業(?)も独創的ですが、今回の事件もまた、「重たい予定調和」に向けてストーリーが紡がれていきます。高校生である主人公たちがそうやって「世界」を知っていくこと、その課程そのものが「青春」である、というのはセンチすぎるでしょうか?
『退出ゲーム』を読んで楽しめた方なら本書も満足できると思います。どうやら第3弾も近々刊行されるようで、非常に楽しみです。
【ご参考】
●『水の時計』(初野晴/角川文庫) - 三軒茶屋 別館
●『1/2の騎士 harujion』(初野晴/講談社ノベルス) - 三軒茶屋 別館
●『トワイライト・ミュージアム』(初野晴/講談社ノベルス) - 三軒茶屋 別館
●『漆黒の王子』(初野晴/角川文庫) - 三軒茶屋 別館