新城カズマ『われら銀河をググるべきや』ハヤカワ新書juice

F「さて、今回取り上げる本は新城カズマの『われら銀河をググるべきや』だ」
M「んー、この対談形式、どこかでみたような・・・」
F「いや、この本がblogと同じ対談形式だったもので、つい、ね・・・っておまえ誰だよ!」
M「いやいや、私よ、私」
F「知らないよ。で、この『われら銀河をググるべきや』なんだけど、作者は『15x24』、『サマー/タイム/トラベラー』などで有名なSF作家の新城カズマ
M「フジモリは『蓬莱学園シリーズ』からのファンなんだよね」
F「せっかくイニシャルにしてるんだから名前で呼ぶなよ!・・・『われら銀河を〜』はハヤカワ新書juiceという見慣れないレーベル。「ついに早川も時代の波に」・・・と複雑な気分になっんだけど、内容は非常にエッジが効いていて、面白かったよ」
M「横書きというのも変わってるわよね」
F「これは、著者のblog「散歩男爵」で一時期連載していた「われら銀河をググるべきや」に書き下ろしを加えたからだ。
blog連載時にフジモリが一度取り上げてるね。
新城カズマのgoogle論がめちゃめちゃ面白い - 三軒茶屋 別館
まさに「フリーミアム(基本的なサービスを無料で提供し、さらに高度な機能や特別な機能について料金を課金する仕組みのビジネスモデル)」といったところかな」
M「フリーミアムブラザートムって似てるわよね」
F「似てないよ!ムしか合ってないよ!・・・さて、内容なんだけど、書き下ろし以外はblogとほぼ同じ。今回の書評のように対談形式になったり、近況を報告するところなども忠実に再現してるよ(笑)」
M「ある意味すごいわよね」
F「そこが新城カズマ新城カズマたるゆえんだと思うけど(笑)。しかしながら、内容は骨太だ。googleによって我々の世界がどう変わるかについて、SF作家らしい視点で思考実験を行っている」
M「googleっていうのは、検索エンジンとしてのgoogle?」
F「まあ、それもそうだけど、新城カズマが言うには「google + twitter + ipadなどなど」という、電子世界のことだ」
M「ふうん。そういう意味では、最近の電子書籍ブームについても関係ありそうね」
F「この本の元になったblogが書きはじめられたのが2008年。ほんと、現実の進み方はときにフィクションよりも早いよね」
M「まったく。で、googleによって私たちの世界はどう変わるの?」
F「たとえば、こんな一説。

S「つまりですね……しばらく前に『どうしてネットでは情報が(ほぼ)無料で手に入るんだろう? なぜGoogleは無料で検索させてくれるんだろう?』ということを考えてて……出た結論は、
1. Googleの検索は『無料』ではない
2. たとえGoogleの貼り付けてくる広告をすべて無視したとしても、僕たちは何らかの『対価』をGoogleに支払っている
3. 単に、その『対価』がこれまでの経験や常識では計測しにくいものである
ということで」(P50)

「フリー」を提供するgoogleによって我々の価値観の変動する可能性を示唆し、また

基本的人権ですらSF的想像力の前ではけっこう弱々しいものなんですから、著作権なんて風前の灯ですよ。それは確かに柳川さんの仰るとおり、近代という時期に特有の特権でしかない。(P140)

著作権についての考え方にも切り込む。
リサーチによる「現実」の切り取りとSF作家らしい思考の飛躍で、「未来」の急激なる変化を読者に思い起こさせる。この本もまた、ひとつの「SF小説」なんじゃないかと思うよ」
M「そういう意味では、この本、いわゆる「センスオブワンダー」に溢れているわよね」
F「フジモリは、この本を読んでこんな想像(妄想)をした。
 電子書籍によって全ての文章が「テキスト化」された近未来。人々は「書籍」を「文章」あるいは「ワンフレーズごと」にバラ買いできる。そう、曲の一部をダウンロードできるみたいに。
 また、フレーズや文章を引用するには「引用費」が発生し、引用元、あるいは引用元の引用元された著者(あるいは発言者)に還元される・・・
 なんてね」
M「確かに、ありそうな感じよね」
F「はっきりいって、この本を読むとそんな未来への妄想が次々に湧いてくる。内容は決して読みやすくはないし、いわゆる「思いついたひとネタを延々と引っ張って一冊にする」ような新書とは真逆の、詰め込まれた一冊だ。しかしそれがまた新城カズマらしいといえるし、ジャングルの中でおいしい果実を見つけるように、面白いネタがごろごろ転がっていることも事実。こういった未来への妄想について興味を持ち、また現代のガジェットが好きな人は読むと面白いことが起きると思うよ。万人には勧められないけど、読む人によってはネタの宝庫になる、そんな一冊かな」
M「まあ、まずはblogを読んでみて、興味を持ったらこの本を書う、というパターンがおすすめかしらね。まさにダークドレアム!」
F「今度は「ム」しか合ってないよ!いいかげんにしろ!」

サマー/タイム/トラベラー (1) (ハヤカワ文庫JA)

サマー/タイム/トラベラー (1) (ハヤカワ文庫JA)