『スキュラ・ダークリー』(六塚光/一迅社文庫)

スキュラ・ダークリー (一迅社文庫)

スキュラ・ダークリー (一迅社文庫)

 巻末の作者あとがきで述べられているミステリとライトノベルについてのあれこれに釣られて購入しました。なので、本書と同一の世界観を舞台にしているという「灰とリヴァイアサン」シリーズは未読ですのであしからず。

 ホームズたのポワロだの、ややマイナーなところではロジャー・シェリンガムだのH・Mだの、キャラクターの立っている探偵役は山ほどいます。だから、ライトノベルとの親和性はそれなりにあると思うのですよ。しかし実際に書こうとしてみると、ライトノベルという畑からミステリへアプローチする仕方が難しいというか何というか……。
 情報ばかりをつらつらと並べ立てすぎると面白みに欠けるし、さりとてそれ以外のものを詰め込みすぎると散漫になる。バランスの問題だとは思うのですが、その均衡点がどこにあるのかは、なんともつかみがたいところがあります。
 ライトノベルとミステリ、というテーマは、今後も追いかけていきたいところではあります。
(本書あとがきp285より)

 この件については、以前に書いたライトノベルとミステリの相性についてという記事で若干の考察をしましたが、実は両者はそんなに相性がよくないのではないのかと思っています。それが現象として表れてしまったのが富士見ミステリー文庫というレーベルの消滅で、その原因には内在的要因と外在的要因がある、というのが私の考えです。とはいうものの、一般論としてはともかく、具体的なタイトルとしてはミステリとしてもライトノベルとしても面白い作品はあります。なので、なかなか困難なテーマかもしれませんがこれからも是非追い続けて欲しいと思うので、応援の気持ちを込めて本書を紹介させていただきました。
 ちなみに、本書の内容自体は、やはりあとがきで述べられているように、あくまでもミステリ「風」です。なので、ミステリとしての面白さを期待して読むと痛い目に遭いますのであしからず。さらにいってしまうと、ぶっちゃけライトノベルとしてもそんなにオススメではなかったりします(コラコラ)。まあテーマ性を買ったということで。
 さらに付言しますと、本書はタイトルから明らかなようにP・K・ディックの『スキャナー・ダークリー』がモチーフになっています。で、実は真相といいますか犯人が『スキャナー・ダークリー』を既読だとバレバレだったりします(笑)。私の評価が辛目になってしまったのもそのせいかもしれませんね。

スキャナー・ダークリー (ハヤカワ文庫SF)

スキャナー・ダークリー (ハヤカワ文庫SF)