『ハチワン』と『3月のライオン』の読者向けの小ネタを「将棋世界」から

 たまには専門誌の販促記事を(笑)。といことで、ただいま絶賛発売中の「将棋世界」2009年12月号から『ハチワンダイバー』と『3月のライオン』の読者の方向けの小ネタを2つほどご紹介ー。

そのいちー

 勝又清和六段による連載「突き抜ける!現代将棋」。本誌には「第3回 果てなき石田流ロマン」と題した石田流の特集が組まれています。昭和46年第30期名人戦の升田による早石田シリーズから現代の早石田までの流れや当時と今の違いなどが分かりやすく解説されています。初心者から上級者まで幅広くオススメできる内容です。
 石田流ときいてハチワン読者が思い浮かべるのは、なんといっても新石田流でしょう。
●新石田流(参考:「7手で終わってる」ってどういう意味?

 菅田の師匠によって復活した早石田。その新石田流が3巻では斬野によって指されて菅田を瞬殺します。また、7巻ではテレビゲームの筐体の向こう側にいる相手との対戦で菅田が用いてやはり勝利を収めています。
 ”最新必勝定跡”(7巻p10より)とまで紹介されている新石田流。作中では菅田の師匠が編み出したとされていますが、実際にはハチワンの将棋監修を担当している鈴木大介八段が編み出した戦法です。▲7四歩とそれに続く変化手順の優秀性が認められたことによって、鈴木八段は升田幸三賞(Wikipedia-升田幸三賞)を受賞しました(なので、鈴木流、あるいは鈴木式早石田とも呼ばれます)。
 「将棋世界」連載の勝又六段の講座の特徴は、その指し手や戦法を指した棋士へのインタビューが行なわれる点にあります。ということで、早石田の特集となれば当然鈴木八段にも取材している*1のですが……。

鈴木 いまは早石田は指していません。理由はいくつかあって、▲7四歩の変化はちょっと先手がきついのではないかと思うようになった。どうも角の動きがダサイ…。
(『将棋世界』2009年12月号p83より)

 ちょwwww師匠wwwwww
 もちろん、定跡や研究の結論というのは常に変化の可能性を含んでいますので、もしかしたら新石田流が必勝定跡としての地位を確立する日が来るかもしれません。ですが、具体的な変化や局面についてはぜひ本誌を読んでいただきたいのですが、どうも新石田流は苦しいのではないかというのが現時点におけるプロ間での認識のようです*2
 新石田流の明日はどっちだ!

そのにー

 『ヤングアニマル』2009年11月13日号(NO.21)掲載『3月のライオン』第37話では、島田が過去の獅子王戦挑戦者決定戦で敗北を喫した将棋の検討がなされています。
●検討局面

 この局面、実は羽生善治名人が600勝を達成した将棋などの前例があります(なので、上の図もその将棋から引っ張ってきました)。
【参考】将棋の棋譜でーたべーす:1999年2月9日王将戦第4局▲森下卓対△羽生善治戦
 上述の森下‐羽生戦では二海堂が主張するように▲6一角△5二歩を入れてから▲7四歩としていますがはたしてそれでよいのか?重田が主張するように単に▲7四歩の方が良いのでは?そもそも桐山が主張するようにこの局面自体が先手面白くないのか?
 相矢倉戦における重要な変化ですが、この手順が偶然かどうかは分かりませんが、「将棋世界」2009年12月号掲載の木村一基八段の講座「これで矢倉は指せる」第13回で検討されています。p175で紹介されている第9図以降の指し手▲5四歩△同金がまさに上述の変化図なのですが、果たして木村八段の見解やいかに? 気になる方はぜひ「将棋世界」12月号をお読みくださいませませ(笑)。



 「将棋世界」12月号には他にも、はてなー大好き(笑)梅田望夫王座戦*3第2局エッセイ「「心のありよう」の差」や、0-3から逆転防衛を果たした深浦康市王位の自戦記「絶望からの防衛」なども掲載されています。興味のある方はぜひ買って読めばいいと思うよ(笑)。

*1:他に羽生名人、久保棋王戸辺五段にも取材しています。

*2:さらに、本誌p162以下に掲載の久保利明棋王による連載「さばきのエッセンス」第2回が、”鈴木流急戦”と題しての新石田流についての論稿なのですが、やはり同一局面について振り飛車自信なしという認識で一致している模様です。詳しくはやはり本誌をどうぞ。

*3:羽生王座18連覇達成という現実感のないあり得ない数字が嫌でも目に付きます。