押切蓮介『ピコピコ少年』太田出版

ピコピコ少年

ピコピコ少年

『でろでろ』『ミスミソウ』などの作者・押切蓮介が雑誌『CONTINUE』に連載していたエッセイマンガです。
タイトル「ピコピコ少年」とあるとおり、ピコピコな音楽だった、ファミコンをはじめとする昔のゲーム機の思い出をつづったもので、ゲーム漬けだった作者の当時の幼少期をおかしくも悲しい筆致で描いています。
ファミコン世代」という言葉がありますが、幼少期にファミコンファミリーコンピュータ)を経験した世代は、その後のインフラの進化とともに歩むかのように年を経ています。

ナナロク(ななろく)世代とは・・
一般的に辞書や国語辞典では1976年前後に生まれたネット起業家を指す。ネット業界では、ソフトバンク社長の孫正義氏(1957年生まれ)らが「第1世代」、楽天社長の三木谷浩史氏(1965年生まれ)らを「第2世代」、1976年前後に生まれた世代を「第3世代」と位置づけられている。このブログではナナロク世代とは「1976年前後に生まれた世代そのものを指して使っている。
1976年前後に生まれた世代は小学生のころ家庭用ゲーム機であるファミリーコンピューター(ファミコン)が発売される。思春期には音楽記録メディアがレコード・カセットテープからCDへ、大学に入学したころにウィンドウズ 95が発売され、卒業の頃インターネットによる就職活動が始まるなど・・、あらゆるトランジション(過渡期)においてアナログ的環境からデジタル的環境への転換の瞬間の時にいつも身を置く。アナログ的な感覚を残しつつ、デジタルとの友好的・効果的な付き合い方を知っている世代でもある。
ナナロク世代とは・・ | ナナロク世代の生きる知恵の輪より)

趣味嗜好やマーケットが多様化し、狭い(と一般的に思われている)ゲームの世界ですら共通言語を持たなくなっている現在、「ファミコン」という「現象」を共有した人々(フジモリ含む)は、ある意味幸せなのだと思います。

勉強をしなくて親にファミコンアダプタを隠されたり、ゲーセンに不良がいたり、思春期にエロゲーの洗礼を浴びたりと作者の生々しいエピソードには、思わず「うんうん」と頷いてしまう人もいるかと思います。
作者・押切蓮介はホラーギャグの作風で知られていますが、どこか物悲しくノスタルジィを感じさせる筆致が、この作品に見事に合っており、当時の「バカだった自分」を振り返り青春の蹉跌に胸の古傷を痛いほどえぐられる内容でした。
一言で言うなれば、「ファミコン世代の『三丁目の夕日』」。
美化されつつも懐かしみたくなる一冊であり、ファミコン世代にはぜひ読んでほしい漫画だと思います。