新城カズマ『15x24イチゴーニーヨン link three 「−−−裏切者!」』集英社スーパーダッシュ文庫

15×24 link three 裏切者! (集英社スーパーダッシュ文庫)

15×24 link three 裏切者! (集英社スーパーダッシュ文庫)

新城カズマの青春群像サスペンス(←勝手に命名)『15×24』の第3巻です。
本書は全4ヶ月刊行の2ヶ月目、6分冊の3冊目であるならば本来「起承転結」の「承」にあたるはずなのでしょうが、この巻では冒頭から衝撃の展開です。
もう何を言ってもネタバレになりそうで非常にヒヤヒヤしているのですが(笑)、3巻ではこの物語の全容がおぼろげながら見えてきた、と言えるでしょう。
冒頭の衝撃的な展開はまた、物語に新たなルールを追加します。
人は簡単に死ぬ。
作中で、ファブリは語ります。

<<現実>>ほどリアリティのないものも無いんだよ、笹浦君。
なにしろ、いつでもどこでも無茶苦茶なことはおきるんだから。(p172)

リアリティについて語る自身の呼び名が「ファブリ」であるのはまた痛烈な皮肉でしょうが*1(12/12追記。どうやらブリタニカの「ファブリこども世界名作シリーズ」が元ネタのようですね。http://tomoru.heteml.jp/kenchan/fabri/) 、単なる「子供たちの」鬼ごっこに「大人たち」が参入し、さらには登場人物すべてに「死の可能性」が発生するというこの壮大で局所的な物語は、まさに読者の「リアリティ」の観念を巧みに翻弄しながら紡がれていきます。
link one、link twoと15人の登場人物のステータスや状況、思惑を紹介した後、link threeでは主要な登場人物にいったんフォーカスし拡散した物語をいったん集中させます。そこで浮かび上がった「物語」を、次巻以降でどう「変調」させるのか、まさに1ヵ月後が待ち遠しい内容でした。
新城カズマ『15x24イチゴーニーヨン link one 「せめて明日まで、と彼女は言った」』集英社スーパーダッシュ文庫 - 三軒茶屋 別館
新城カズマ『15x24イチゴーニーヨン link two 「大人はわかっちゃくれない」』集英社スーパーダッシュ文庫 - 三軒茶屋 別館
新城カズマ『15x24』感想リンク集 - 三軒茶屋 別館

*1:暴力団3人組の呼び名の由来は「世界名作劇場」の登場人物が元ネタと思われます。ファブリ:「ペリーヌ物語」、インジャン・ジョー:「トムソーヤの冒険」、ガスパール:「家なき子レミ」。ちなみに「レミ・バルブラン」は「家なき子」の主人公ですが、原作では男の子、アニメでは女の子になっています。