かきふらい『けいおん!』芳文社

けいおん! (1) (まんがタイムKRコミックス)

けいおん! (1) (まんがタイムKRコミックス)

雑誌『まんがタイムきらら』に掲載中の4コマ漫画です。
ストーリー・・・は4コマ漫画なのであって無きが如しなので(笑)、「4コマ漫画の計は1話目にあり」(フジモリ造語)に沿って第1話をご紹介します。*1

あ、1話目じゃわかりませんね(笑)。2話目もご紹介。

廃部しかかった軽音楽部に入った女子4人が、だらだらと日常を過ごしていくお話です。日常4コマ特有の「ユルさ」が出ており、ボケ要員とツッコミ要員のバランスも絶妙です。『あずまんが大王』の後継と言い切ってしまえばそれまでですが、各キャラの立ち位置や役割が巧く機能しているので、安心して楽しめると思います。
そんなユルい日常でも、「音楽部活」らしさを感じるのが文化祭のライブのシーン。
『ぎぶそん』なんかもそうだったのですが、年に一回の晴れ舞台に向けて全員が一致団結し、はじめはバラバラで下手くそだった演奏が徐々に上手くなっていく。。。という過程はスポ魂漫画を読んでいるかのように読む側のテンションも上がります。
全員で一つのものを作り上げる。
そのなかで個人個人が成長していく。
そしてその成果(演奏)は、「その場」で終わる。
音楽を含め、舞台芸術は「一回性の芸術」と呼ばれています。録音・録画したものを聴きなおす・観なおすことも出来ますが、その舞台、その場所で行なわれた演奏の空気はその場でしか味わえない「刹那」のものです。それゆえに聴くもの、観るものに深い感動を残すのだと思います。
彼女らは文化祭のライブという目的を持っていますが、コンクールやオーディションなどと違い、明確な勝ち負けはありません。「成功」「失敗」という結果はあるものの、成功したからといって長くできるわけでも、失敗したからといって最初からやり直すこともできません。ライブの時間は「刹那」なのです。
舞台芸術経験者なら共感していただけるかと思いますが、ライブそのものは数十分という短い時間ですが、その数十分のために何日、何ヶ月、何年も練習や打合せなどの「時間」を積み重ねます。ライブというのはそれまでの「積み重ねた時間」が濃縮された一瞬だとも言えるでしょう。
もちろん、体育会系の部活も「日ごろの積み重ねを「今、このとき」にぶつける」ということは同じですが、先ほど言ったようにライブでは明確な勝ち負けがありません。しかし、だからこそ、その「一瞬」は純粋で、刹那的で、そして儚く美しく光り輝くのかもしれません。
そういう意味でイメージがかぶるのが映画『スウィング・ガールズ』

未視聴の方に簡単に説明しますと、東北の田舎町の高校で落ちこぼれ女子高生たちがひょんなことからビッグバンドを組んでジャズを演奏することになる、というお話です。ビッグバンドというのはジャズの形式の一つで、ブラス(トランペット、トロンボーン)+サックス+ピアノ+ドラム+ギターと、ある意味『けいおん!』とブラバン漫画との合いの子と言えます。この映画では、山場である「ライブ」(実際には音楽祭での演奏)に至るまでの「過程」を、丁寧に、そして面白おかしく描いています。勝ち負けを競うわけでもなく、ただただそれまでの練習の成果をぶつけるだけ、というスタイルは、『けいおん!』に通じるところがあると思います。
やや過大評価気味に解釈すると、『けいおん!』ではライブという「一瞬の輝き」のための「過程」、すなわち積み重ねである「日常」をあますところなく描写している、と言えるのかもしれません。
ライブという不可逆な一瞬はそれゆえに美しく光り輝きます。それがまた、彼女たちの学生生活そのものと否が応にも重ね合わせられるように思えました。

*1:厳密には4コマでの1話目です