「Google Street View」と「渡鴉の人見」とプライバシー権の問題

 少し前から話題になっていますが、Googleのサービス「Street View」が今年の8月5日から利用可能になりました。
【参考】Googleマップの「Street View」機能、日本でも利用可能に:CodeZine(コードジン)
 実際に遊んでみると確かにいろいろと面白いのですが、1年以上前からサービスが開始されているアメリカではプライバシーの侵害が問題となっています。

 「Google Street View」サービスはどうやら、個人の地所に立っている「立ち入り禁止」や「私道」の立て札は単なる飾りだと考えているようだ。
 同サービスは、世界中のいくつもの都市について、ドライバー視点の街路の様子をインターネットユーザーに提供するものだが、住人からは、Street Viewの画像は自分たちのプライバシーを侵害するものだとの怒りの声が上がっている。カリフォルニア州ハンボルト郡の住人たちは、Street Viewの画像を集めるために雇われたドライバーが、私有地の標示を無視して私道に入り込んでいると苦情を訴えている。
グーグル、私道内に侵入したとして非難される--Street Viewをめぐって - CNET Japanより

 Google側の「完全なプライバシーなど存在しない」という主張は開き直りとしては素敵だと思いますが*1、この「Google Street View」に似た存在として、『魔法先生ネギま!』に出てくるアーティファクト「渡鴉の人見(オクルス・コルウィヌス)」があります。

「私 朝倉和美アーティファクトは「渡鴉の人見」!! その名のとおりのスパイアイテム! 最大6体のスパイゴーレムを超々遠距離まで遠隔操作可能!!」
「戦闘能力なし ステルス性に不安アリ 手順を踏まねば私有地内等プライベートエリア内には入れないなど制約はあるものの そこは我が友さよっちのカバーによって最強無敵のパパラッチアイテムに!」
(『魔法先生ネギま! 22巻』p92より)

 現実世界のテクノロジーが人権を無視しているのに魔法世界のアイテムがそれを守っているのがおかしいですが(笑)、「渡鴉の人見」の制約の説明にあるとおり、プライバシーを無視したスパイアイテムはやはりパパラッチとなる危険と隣り合わせなのです。
 もっとも、「Google Street View」のような技術の進歩に対して法学上のプライバシー権の議論が追いついていないのが実際のところですから、どこまでが許されてどこからが許されないのかは正直何ともいえません。
 既存の議論で参考になりそうなものといえば、防犯カメラ(監視カメラ)とプライバシー権の問題ということになるでしょうか。しかし、それもあまり判例の蓄積がないのが実情です。ただ、そこで議論されているのは、犯罪の抑止という監視カメラの必要性とプライバシー権の保護という両者の調整をどのように行なうのかという議論です。なので、「Google Street View」という私企業のサービスとプライバシー権の保護とをまともに比較して調整を図ろうとすると、おそらくはGoogle側にかなり不利な結論が出る可能性が高いと思います*2。なので、技術が進歩すればそれを最大限に活用したいという気持ちは分かりますが、プライバシー権を侵害したら元も子もないわけで、ほどほどの運用がベターなのではないかと、当たり障りのない結論でお茶を濁しておくことにします(笑)。
【参考】四国新聞社

魔法先生ネギま!(22) (講談社コミックス)

魔法先生ネギま!(22) (講談社コミックス)

*1:そんなこといったら、「完全な生存権など存在しない」とか言い出して人を殺しまくるのもありになってしまいます。

*2:もっとも、訴訟に値するだけの事件性が民事にしろ刑事にしろ生じるかは不明ですが。