鹿島麻耶『学園夢探偵 獏』講談社

学園夢探偵獏 (アフタヌーンKC)

学園夢探偵獏 (アフタヌーンKC)

 漫才マンガ『リンガフランカ』の作者・滝沢麻耶が鹿島摩耶名義で書いた「ガクエンエロミステリアスコメディ」(講談社HPより)です。
 夢ノ杜学園高等部1年・浅野修一郎は毎晩、夜中の3時に義理の母親を惨殺する夢を見る。保健室の謎の住人・陸前獏は他人の夢を分析する夢探偵と呼ばれている。浅野の悪夢から導かれる答えは何なのか?・・・というお話。
 夢判断というのは探偵の推理に似ている部分もあり、少ない情報から想像を膨らませ論理的に答えを導き出す行為です。確かに悩み相談に来る生徒の夢の内容からその生徒が抱えている悩みを看破するやりとりは「名探偵、みなを集めてさてと言い」を地で行く流れ。しかしながら、この作品は単なるミステリィやサスペンスという枠組みで収めるのではなく、依頼者の見る「夢」そのものに重きを置いています。
 「夢」という不可思議な空間は、小説よりもマンガというビジュアルを用いた媒体に向いています。依頼者の見る不思議な夢。その不思議さはマンガであれば一目でわかりますし、読者が依頼者に感情移入して不安を抱かせるに余りある効果を持っています。
 『リンガフランカ』もそうでしたが、作者の筆致はところどころ意図的に不安定にしている部分があるのですが、『学園夢探偵 獏』もまた、その不安定な筆致が一層、夢の不思議さを引き立たせます。ストーリィそのものも、謎や伏線など意外と「ミステリー」してますし、1巻で起承転結うまくまとまっていると思います。
 キャラクター描写ですが、主人公がエロ女子高生という『リンガフランカ』では登場しなかった「オトナの女性」です。これがまた妙にエロくて良いです(笑)。筆致とうまく合っているのかもしれません。1巻完結のマンガは「続編が読みたくなる腹八分目ぐらいがちょうど良い」と思っているのですが、このマンガもその例に漏れず、ほどよい飢餓感を与えてくれる1冊でした。
【参考】2008年漫画ナツ100 - 三軒茶屋 別館
リンガフランカ (アフタヌーンKC)

リンガフランカ (アフタヌーンKC)