『将棋世界』のハチワン特集とか

将棋世界 2008年 08月号 [雑誌]

将棋世界 2008年 08月号 [雑誌]

 『将棋世界』2008年8月号では、『ハチワンダイバー』の特集が組まれています。現在放映中のドラマが佳境を迎えていることもあって、菅田役の溝端淳平・そよ役の仲里依紗のインタビューにこれまでのドラマのあらすじ、ドラマの将棋監修に携わっている大平五段、戸辺四段、佐藤(天)四段の座談会、漫画監修の鈴木八段のコラム、ドラマ版についての柴田ヨクサルへのインタビューなど、なかなか興味深い内容になっています。
 しかしながら、一番の注目は何といっても付録の小冊子でしょう。『ハチワン次の一手』と題されたこの付録、なんと漫画『ハチワンダイバー』の将棋監修を担当している鈴木大介八段自らが漫画の中で実際に出てきた将棋を次の一手問題集に仕立てて全部で25の局面を解説してくれています。実戦譜がある場合にはそれも分かるようになっています(ほとんどが鈴木八段の実戦からです)。将棋ファンは元より漫画の『ハチワン』ファンにとっても必携だと思います。
 ただ、内容面でいくつか気になったことがあります。特にこの局面。

 漫画だと6巻p28、付録の小冊子だとp62*1の局面です。付録の方では、△6七香以下▲8六歩とするくらいだが、△6八香成▲8七玉△7八成香が詰めろで一手一手となる、と説明されています*2
 しかし、私が6巻の解説をしたときにもコメント欄でご指摘をいただいたのですが、ここで▲9五角という手が成立すると思うのです。

 この手は、7七の地点から玉の脱出路を作りつつ相手陣の7三の地点を睨む攻防の角出です。これでまだ難しい、というかむしろ先手よしとすら思われるのですが(ご意見等ありましたら是非)、この手の解説がなかったのは少々残念でした。
 というようなことはありますが、オススメなことには間違いありません。漫画を楽しみながら棋力を向上させることにもつながりますので、興味のある方はぜひ読んでみて下さいませ。

 上記のように、今月号の『将棋世界』はハチワン特集が組まれてはいますけど、本命の特集はこれではありません。何といっても名人戦です。今回は名人戦の第5局と第6局(羽生善治十九世名人誕生の将棋)が掲載されてて、それに併せて森下九段と鈴木八段の特別対談『羽生が作った現代将棋の概念』も収録されています。将棋の歴史的にとても重要な号ですし、ハチワン特集と併せてお買い得だと思います。
ハチワンダイバー 1 (ヤングジャンプコミックス)

ハチワンダイバー 1 (ヤングジャンプコミックス)

*1:付録の方では便宜上先後が逆になって掲載されています。

*2:ここの部分の説明は、小冊子の記述を元にしながらも私の一存で先後を元に戻させていただきました。