テレビドラマ『ハチワンダイバー』第5話感想

 前回の続きですが、菅田対文字山戦が決着。終盤の熱い攻防が原作どおりに見事に再現されてたのは原作厨としては素直に嬉しかったです。特に、追い詰められた文字山の精神世界の描写(この間1秒)は面白かったです。
 金の楔(詰めろ)→攻防の角(詰めろ逃れの詰めろ)→歩の手裏剣(詰めろ逃れの詰めろ逃れの詰めろ)という技の掛け合いは実にスリリングで、これこそ将棋の醍醐味というものです。それが将棋を知らない人に果たしてどれだけ伝わったのかは分かりませんが、ほんの少しでよいので体感していただければ将棋ヲタとしては大満足です(笑)。切れ負けながらも自らの負けと菅田の勝ちを認めるシーンがきちんと表現されていたのも言う事なしです。とても良かったと思います。
 で、オッパイダイブキター!!

    _  ∩ 
  ( ゜∀゜)彡 おっぱい!おっぱい! 
  (  ⊂彡

 いや、二こ神とのオッパイ将棋もさることながら、原作的には絶対必要なこのシーンを果たしてやってくれるのかどうか不安だったのですが、本当にやってくれました。

胸を強調されるのも、お芝居上のことですし、大丈夫です。
インタビュー:中静そよ/みるく役 仲里依紗さん

 さすがにプロですね(笑)。
 ここにきて、ドラマのオリジナルストーリーもかなり顔を出してきました。原作が未完なだけに独自のストーリー展開を迎えるのも当然のことではありますが、原作厨としては変な風に改変されなきゃいいなぁとどうしても心配してしまいます(汗)。ま、将棋さえシッカリ描いてくれれば将棋ヲタ的には別に構いませんけどね。
 で、三人目の真剣師、斬野シト役は京本政樹。完全にビジュアルで選びましたね。文字山がキモいキャラだっただけに、斬野のカッコつけキャラも映えるというものです(笑)。7手目▲7四歩の新早石田は、漫画やドラマにありがちなハッタリではなくて実際に有力とされている指し方です。序盤から飛車と角が乱舞する大乱戦になります。一手間違えればあっという間に終わってしまう凶悪な戦法です。
 もっとも、7手で終わりということが厳密に証明されているわけでもないので、あえてそれに挑む指し方もありはありです。ただ、それ以前に変化して▲7四歩を回避する指し方に比べれば相当にリスクを背負わなければいけない展開であることは間違いありません。
 なので、賭けの対象がそよであることに動揺してしまい、ふらふらと何の覚悟も準備もないまま6手目に△8五歩と突いて、その結果、7手目に▲7四歩とされた時点で「終わった」というのは、物語的なご都合主義以上の説得力がある展開だと思います。早くも追い込まれた菅田はダイブを試みますが、このとき、原作だと”そよ群”が出現するのですが(笑)、ドラマでは師匠とぶつかることになりました。これはひょっとしたらこの先の展開のフラグですか? で、結局ハチワン惨敗。次回は二こ神さん再登場のようですが、どうなるのか楽しみです。
【関連】インタビュー:斬野シト役 京本政樹さん



 将棋についてですが、まずは菅田対文字山の終盤戦。

 金の楔です。この手は▲2一金からの詰めろになっています。そこで文字山は△4三角と攻防の角で受けました。

 この角は、▲2一金には△同角と取る手を用意し、さらには相手玉をにらんで△1六銀からの詰めろを狙っています。つまり、「詰めろ逃れの詰めろ」という返し技なのです。すわ逆転か? ところがここで菅田は最後の決め手を放ちます。

 ▲3四歩! 角道をさえぎる歩の手裏剣ですが、角で取ってしまうと▲2一金から後手玉は詰まされてしまいます。だからといって銀で取ると▲2二銀(金)の一手詰み。ならばと△3二角として楔の金を取っても▲3三歩成が詰めろで△同桂としても▲8一飛からの詰みです。だからといってこのまま放置すると、手順は長くなりますが▲2二銀以下の詰みです。つまり、この歩は「詰めろ逃れの詰めろ逃れの詰めろ」なのです。攻めにも受けにも窮した文字山はここで無念の時間切れ負けとなりましたが、実に見事な一局だったと思います。
 続いて斬野対菅田戦。

 7手目▲7四歩。互いの角道が通ったまま飛車のコビンをこじ開ける手です。「早石田」と呼ばれるこの仕掛け自体は昔から知られていたものではありますが、劇中でも説明されていた通り無理筋とされてきました。ところが、▲7四歩の先に新たな手が発見されたことで有力手として見直されることになりました。

 この▲5六角が新手です。この手によって「早石田」は「新早石田」として生まれ変わることになりました。そして、発見者である鈴木大介八段には2005年に升田幸三賞が与えられました(参考:Wikipedia)。
 もっとも、上述のようにこの手で先手勝ちと断言してしまってよいものかどうかは私には判断できません。あまりにも変化が膨大なので(汗)。ただ、現時点ではとても優秀と評価されてるのも確かです。興味のある方は調べてみると面白いでしょう。
 この文字山戦と斬野戦は漫画と同じ展開なので、興味のある方はそちらの方をお読みくださいませませ。
【関連】
ハチワン=081=オッパイと読んでしまう人のための『ハチワンダイバー 3巻』将棋講座(漫画の対文字山戦と対斬野戦の解説です。)
「7手で終わってる」ってどういう意味?(新早石田についての簡単な解説です。)

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