『ヴァンサンカンまでに』(乃南アサ/文春文庫)

- 作者: 乃南アサ
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2008/03/07
- メディア: 文庫
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本書で描かれているのは、24歳の女子社員・仲江翠の恋愛ゲームです。ゲームといっても別にたいしたことはしていません。ちょっとした嘘と裏切りと欺瞞があるだけです。しかし、自分が少しでも得をするために相手と駆け引きをして、ときには競争相手を出し抜くためのものであることは間違いなくて、その意味では確かにゲームです。「幸せはそんなふうにつかむもんじゃない」というのはおそらく正論なのでしょう。しかし、「じゃあ具体的にはどうすればいいの?」と疑問を持ってしまうと、やれ条件やら将来性やらを考えて頭を働かせてしまうのが人間の悲しい性質というものでしょう。
本書のタイトルにあるヴァンサンカンとは、フランス語で25歳(vingt-cinqans)という意味です*1。本書はそもそも1991年に単行本で刊行されてまして、つまりバブル景気の頃に書かれた本ということになります。したがいまして、現在とは価値観の常識も微妙に異なっています。終身雇用制度も確実なものとはいえなくなっている昨今では、社内恋愛はともかく不倫はやりづらいでしょう。また、男女とも結婚年齢は年々上昇傾向にあります。”ヴァンサンカンまでに”とはなかなかいかないのが現実でしょう。とはいえ、こうした物語が非現実的ななものなのかといえば、決してそんなことはなくて、今もどこかでこんなことはあるんだと思います。衝撃の展開とかはまったくなくて物語としてはホントに平凡なのですが、それだけに複雑な気持ちにもなりました。たまに読む分にはこういうのも悪くはないと思いました。
*1:ここだけの話、ずっと晩餐館焼肉のタレのイメージしかなかったのは内緒です(笑)。