コンピュータ将棋がプロを破る日?
羽生はコンピュータがプロを破る時代を2015年と予想している。
そして「そうなったらどうします?」と聞かれて、
「桂馬が横に飛べるようになればOK」と答えてる。
(まなめはうす 2008-03-02「ことば」より)
初耳ならぬ初見なので驚きです。2015年というのはずいぶん近い数字ですね。ちなみに、私が知る限りで、羽生がコンピュータ将棋について語っている直近の言葉はこんな感じです(「」内が羽生の言葉です)。
――コンピュータと人間がやると、どうでしょう。
「コンピュータがどれだけ力を伸ばしていくか、ということが大きいと思います。ハードとソフトの両方で伸びていくのはまちがいないけど、それがどのくらいのスピードで、どのくらいのアプローチややり方になるのか。それによってずいぶん違ってくると思います」
――仮に一生懸命やったら?
「一生懸命やったらすごいことになると思いますよ。たとえばスパコンを使うとか、国家プロジェクトのハードを使うとか。そんなことになれば、今でも危ないんじゃないですか」
――コンピュータが人間に勝つということと、将棋がわかるということとは、別のことですよね。
「そうですね。ゲームそのものを解明するのとはまた別の話です。わかりやすい例としてはオセロでしょう。オセロも終わりに向かって可能性が小さくなっていくゲームが、それでも〈8×8〉はまだ解明されていません。今は〈6×6〉まで解明されましたが、〈8×8〉となるとまだ先のことのようです。将棋の〈9×9〉を解明するのはかなり大変です。よほどのことがない限り大丈夫ですが、コンピュータが勝つかどうかとは次元が違う話ですから
連珠は解明されたし、チェッカーも解明されました。そうしたことは大きな出来事で、すでにそういうものが出てきているということは、受け止めておかなければならないことだと思います」
(『将棋世界 2008年3月号』所収「羽生善治二冠インタビュー」p58〜59より)
この発言からは2015年という具体的な年数はとても読み取ることができません。もっとも、「コンピュータがプロを破る」ということの意味は必ずしも一義的なものではありません。変な話ですが、弱いプロとならすでに対等に戦えるのかもしれません。しかし、多分そういう話ではないでしょう。
現状、トッププロとの間には明らかな差があります。トッププロに一発入れることのできるレベル、という意味ならそれこそ2015年を待たずとも実現できるような気はします。しかし、ある程度の対局数をこなして勝ち越すことのできるレベル、あるいはほぼ確実にコンピュータが勝つレベル、となってくると話はまったく変わってきます。私のようなヘボアマには夢のような話に思えちゃいます。
他のプロ棋士はどのように考えているのでしょう。
私は、トッププロがコンピューターに負け越す日が来るとは思っていません。
(渡辺明『頭脳勝負』p93より)
これは渡辺竜王の言葉ですが、プロの矜持かくあるべし。そうでなくては面白くありません。
現在の僕は、近いうちに、少なくとも自分が現役でいるうちには、コンピュータに勝てなくなる日が来るだろうと考えている。
daichan's opinion「その後の世界」を展望してみるより
これは片上大輔五段の言葉です。竜王に比べるとずいぶん弱気ですが(笑)、どうなんでしょうね。それはともかく、このようにプロ棋士の間でも対コンピュータの評価は分かれています。その中で2015年という数字が一般的な指標といえるのかどうか、私には正直疑問です。2015年というのは、むしろ打倒プロ棋士を目指しているプログラマ側の目標値なんじゃないかと思うのですが……。
【追記】
ちなみに、上記引用文のなかで「桂馬が横に飛べるようになればOK」とされてるのですが、私の弱りきった記憶力の範囲ではありますが疑問符がつきます。仮にそうなった場合の羽生の答えとして「金と銀の位置を入れ替えればいい」というような趣旨の発言はどこかであったように思うのです。しかし、この記事を書くために本棚を散々ひっくり返して、夢に出るまで脳内検索をしてもソースを見つけることはできませんでした(泣)。ぐわー。気持ちが悪いよー。この件についてソースを含めて何かご存知の方がいらっしゃいましたらご教示いただければ大変ありがたいのでよろしくお願いします(ペコリ)。
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