『3月のライオン Chapter.5』盤面チェック

 当ブログはハチワンジョジョが人気コンテンツではありますが、検索ワードを見ると実は『3月のライオン』が2位のサイト名「三軒茶屋」すら軽くぶっちぎっての人気ワードになってます。そんなわけで、『3月のライオン』については単行本が出たときにまとめて記事を書くつもりではいますが、いつまでもこちらだけでは少々申し訳ないので、あくまで単行本までのつなぎではありますが、第5話『晴信』の盤面チェックをさせていただきます。
 今回のお話で、零のライバルを自称する二海堂晴信が腎臓を患っていることが判明しました。その太った容姿といい、間違いなく村山聖(参考:Wikipedia)がモデルになっています。私が将棋に詳しくなければ、今回の病気という設定から死亡フラグを読み取ってたと思いますが、モデルの存在を知ってるとそんな気になれません。
 将棋ファンとして、村山聖という実在した人物をモデルとされたことに正直戸惑いというか抵抗感といったようなものがないわけではありません。しかし、私は村山をモデルに二海堂を描いたことについて反対ではありません。なぜなら、今も昔も病魔と闘いながら将棋を指している棋士はいるからです。そうした棋士の姿を描こうとしたときに、実際に生きている棋士はモデルにはしづらいでしょうし、そうなると村山聖がモデルとして選ばれるのは無理からぬところだと思います。
 ただ、村山をモデルとすることを肯定しつつも、二海堂にはあんまり過酷な運命は背負わせて欲しくはないし死なせて欲しくもないと思ってます。前言と矛盾するのは分かってますし、甘っちょろい感傷だとは分かってますが、でも本音です。
 前置きが長くなりましたが、盤面のチェックへと参りましょう。先手二海堂・後手桐山で始まった一局は相矢倉で、先手二海堂が森下システム(参考:Wikipedia)から▲2五桂と先攻しました(p89.第1図)。
●第1図

 ここから△2四銀▲3五歩△同銀▲1五歩と戦いが始まりました。仕掛けの成否については難しすぎて私には分かりません(泣)。漫画には局面・盤面の一部しか描かれてないのになぜここまで断定できるかといえば、村山聖というモデルの存在から棋譜が推測できるからです。1993年の王将戦村山聖谷川浩司がそれです(参考:棋譜でーたべーす)。
 局面は進んでp91、二海堂が桐山の歩切れをついて5七香と打った局面(第2図)です。
●第2図

 ▲5七香に対して、桐山は△7六歩としましたが、それに対して二海堂は▲6八銀と金取りを放置して銀を打ちました。▲6八銀のところ、確かに金取りは痛いので、▲7六銀としてそれを防ぎたいのはやまやまですが、仮にそうすると△7六歩のときに一歩を取られてますから、△5六歩とされてしまいます。それだと、▲5七香の顔が立ちません。ですから、▲6八銀は理にかなった勝負手だと思います。もっとも、局面は桐山の分析どおり大駒の枚数・働きの差などから既に後手良しなのは間違いないと思います。そこから二海堂が粘りに粘ってp92、第2図です。
●第3図

△7九銀で投了となりました。先手玉は詰んでいます(一例を挙げますと△7九銀以下、▲同玉△6八金▲8八玉△7八金▲同玉△3八龍▲5八銀△同龍▲同歩△6九角▲同玉△3九飛成▲5九角△6八歩成▲同玉△6七銀▲7九玉△5九龍▲8八玉△6八龍まで。手数こそかかりますが手順としてはやさしい詰みです)。
 村山聖がモデルになってることは確かですが、違ってる点もあります。ものすごいお金持ちという設定がそうですが、それよりも病気を周囲には隠している(らしい。少なくとも桐山には)というのが個人的には大きいなぁと思います。……やっぱり不幸フラグとしか思えません。桐山のよきライバルとして何とか一緒に高みまで駆け上がって欲しいですと思いますが……。
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村山聖名局譜

村山聖名局譜

↑この本には本局の棋譜・解説は掲載されてませんので、その点はご注意下さい。