書評ブロガーの戯言:面白さと流行度を等号でつなぐのはやめて欲しい

 暑くて自力でネタを考えられないので、少し前に話題になった感想サイトのネタについて適当に駄弁ってみたいと思います。
はてなブックマーク - 感想サイトが流行らないのは、つまらないから - うぱ日記
 正直言いますと、うちは感想サイトじゃなくて(プチ)書評サイト(ブログ)だというつまらない自負がありますので、厳密にはここで述べられていることをうちに当てはめるべきではないのかもしれませんが、感想も書評も別にハッキリした境界があるわけでもないのであまり気にしない方向でお願いします。てか、ブックマークのコメントがどうも元記事の内容と噛み合ってなくてストレスを感じたので本駄文を書こうと思い至った次第です。
(以下、長々と。)
 さて、リンク先の元記事を読んで私が最初に思ったのは「『美味しんぼ』の全否定だな」ということです。『美味しんぼ』にありがちな話に、美味しいんだけど流行ってないお店(あるいは食材)をいかに流行らせるか? というのがあります。その裏返しとして、美味しくないのに流行ってるお店についての薀蓄が語られたりします。結局は美味しいお店の本物性を出資者になり得るお金持ちに全面にアピールすることで問題をクリアするというお決まりのオチがほとんどですが、いずれにしろ、流行度と面白さとは必ずしも必要十分な関係というわけではありません。
 論理的には、流行ってて美味しい店、流行ってるけどまずい店、流行ってないけど美味しい店、流行ってなくてまずい店、の4パターンは普通に考えられます。そうした可能性を吟味することなく、流行らないのはつまらないからだと決めつけることは、ろくに食べもせずに客の入り具合のみで味の良し悪しを判断するのと同じことです。うちで書いてる書評についても、面白ければ面白い、つまらなければつまらない、と言ってもらうのは全然構いません。構いませんが、それは最低限読んでからにして欲しいです。
 また、やはり『美味しんぼ』にありがちな話として、美味しくてそこそこ流行っている老舗のお店があって、そこに大手チェーンから出店の誘いがあって、さてどうする? というパターンがあります。儲け話に乗っかるのも立派な選択肢だと思います。ってか、私だったら乗りますね(笑)。しかし、そこはグルメ漫画。『美味しんぼ』だと、儲け話に乗って味が変わったり今までの常連さんがないがしろになってしまう恐れがあることを理由に儲け話を断るというのがお決まりのパターンです。ここで問題になっているのは、流行れば何でもいいのか? ということです。生活のかかっている料理店という場面においてですら、こうした選択はあり得るわけです。ましてや趣味でやってる書評・感想サイトならなおのこと、流行(アクセス)を気にしないコンテンツのあり方を追求したって、それはそれで全然OKでしょう。「つまらないから、流行らない」ならそれは当然のことですから面白くなるように考えるべきでしょう。しかし、その逆の「流行らないのは、つまらないから」は真ではありません。そうした言い切りは、それとは異なる信念(そんな堅苦しいものでもないでしょうが)でやってるサイトの中の人が見たときに、その人の意欲を変な方向に変えてしまわないか心配です。私がお気に入りにしている書評・感想サイトさんは20くらいありますが、そうした方々には是非今のままのスタンスでいてもらわないと困るのでよろしくお願いします(笑)。
 あと、うちの基本理念は、書きたいことを書くというただそれだけです。もちろん、読んで欲しくて書いてることは間違いなくて、アクセスが多ければそれに越したことはありませんが、しかしアクセス数の多少はどうしたって二の次三の次です。アクセス至上主義で書くことを変えるのは真っ平ゴメンだというのがうちの大前提です。それを踏まえた上で、リンク先の元記事では、感想サイトを巡回している人が読むのは「誰かの書いた感想」ではなく「特定人物の書いた感想」なのです。とあって、だから感想ではなく、己自身を磨くしかないのです。と結論付けられています。巡回者の気持ちとしては言ってることが理解できなくもないです(30%くらい)。しかし、仮にもおそまつながら書評を書いてる立場としては正直疑問です。もちろん、うちで書いてる書評はアイヨシなりフジモリなりが書いてるわけで、そうした個の存在は消そうにも消せません(残念ながら)。ですが、書評を書いている場合には、まずは本そのものに興味を持っていただき、読んでいただいて、さらにはそれを読んだ者同士として議論なり感想を述べ合うことが最優先されます。あくまでも重要なのは”本”で、次に書評です。アイヨシやフジモリといった個人に興味を持っていただく必要はまったくありません。いや、私個人に興味を持っていただいたり信頼していただけたらとても嬉しいですし、そうありたいとは思います。思いますが、それは優先順位として一段以上低くならざるを得ません。書評とか感想を書くというのはそういうことではないでしょうか。もちろん、そうした書評を書いているのも、さらにはそもそも紹介する本をチョイスしているのも、私以外の何者でもないので、所詮は程度問題に過ぎません。しかし私自身の偽らざる本心として、本そのもの、そのオマケとして書評の内容・そこで言ってることに興味を持っていただけさえすれば、私自身の存在についてはどうでもいいです。ただし、あくまでも「書きたいことを書く」というのが大前提ですので、ときにはそうしたポリシーに反した記事があっさりと載ることもあります(丁度この記事みたいに)。それでも、書評の基本はあくまでも”本”です。
 「だからお前のブログは流行ってないんだ」と言われれば、それはそうかもしれません(もっとも、流行ってる流行ってないの基準は人それぞれで、当ブログ的には今でも十分流行ってますが)。それでも、流行度と面白さを等号でつなぐべきではないという考えに変わりはありません。流行ってないけど面白い書評サイトがあったって別にいいじゃないですか。書きたいことを書いてるかが、サイト・ブログを続ける上でもっとも大事なモチベーションだと思います。それが「面白い」ということではないでしょうか。