柴田ヨクサル・インタビュー

 『近代将棋』2007年4月号(Vol.734)には、『ハチワンダイバー』の著者・柴田ヨクサルのインタビューが掲載されています。わずか5ページではありますが、連載に至るまでの経緯とか裏事情とかこれからの展開などなど盛りだくさんの内容ですので、興味のある方は是非是非ご覧になってみて下さい。
 そのインタビュー中で、柴田ヨクサルと将棋の関わりも紹介されています。小学校のころにはプロを目指していて、地元北海道の大会(激戦区)に出れば優勝の実力だったそうです。で、関根茂九段と二枚落ちの対局の機会をもらい、その結果次第では関根門下として奨励会に入会できたとのことでした。ところが、その対局で「我ながら子供とは思えないショボいハメ手」で挑んで関根九段にたいそう怒られてしまい、それからはしばらく将棋から離れてしまったそうです。それで今に至るわけですが、「いままで2回、赤旗名人戦に出ているんですよ。どちらも地区大会を突破して、前回は東京予選の22人の中に残りました」というから驚きです。さらに、ネット将棋の老舗『将棋倶楽部24』のレーティングも1900点台とのことなので、これはもうかなりの指し手です。
 こうした事柄もインタビューを読んでいただければ分かることですが、それでもあえてこうして紹介したのには理由があります。『ハチワン』の感想をネットサーフィンすると、おおむね好意的なものが多いのですが、そうした中に、「ヨクサルは何をやってもヨクサル」「将棋じゃなくてもよくね?」といった感想がときどき見受けられるのです。それは違う! と声を大にして言いたいです。『ハチワン』は、著者によれば8:2の割合(読者のうち将棋の分かる人2割)という感覚で描かれているそうですが、ここで描かれている将棋観・盤上のドラマ・将棋の内容はとてもシッカリしたものです。将棋が分からない人でも楽しめるように描かれているのは確かですが、しかし、だからと言って将棋が描かれていないということでは全くなくて、それどころか『ハチワンダイバー』こそ将棋というものをとても魅力的に表現している漫画であり、著者自身の将棋の腕前がその裏付けになっているのです。おっぱい将棋で一躍有名になった対二こ神(にこがみ)戦(コミックス2巻収録予定)ですが、将棋の内容は今までにないくらい熱いものでした。香上がりから穴熊と思わせての端角はとても意表を突いたカッコいい指し回しで心底感動しました。あれ以来、矢倉戦で自分も是非指してみたいと狙ってしまうくらいの魅惑的な一局でした(あの将棋は監修の鈴木大介八段が丸々作ったそうですが、さもありなんといったところです)。私は、今回のインタビューを読んで著者がかなりの将棋指しであることを知ってとても納得しました。だからこその面白さなわけですね。
 連載は絶好調ですし、3月19日には待望のコミックス第2巻が発売予定とのことで、今後の展開がますます楽しみです。

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